あるピアニストの呟き - カワサキタカヲ3動向 -

ピアノトリオ「TAKA3」の関連記事を中心に音楽雑記帳としております。

10歳から始めた割には、うーん?ピアノの腕前

ソナチネが弾けたら、アプローチする作品を広げるべき?

ピアノを始めたのは小4。妹がピアノを既に習っておりヤマハ・アップライトを買ったのがキッカケ。クレーンで吊り下げられたピアノがベランダに近づいてくる景色が心に刻まれている。こんなデカイ楽器を自分も触ってみたい!と思ったし「どうしてこれほど立派なモノが妹のモノなのだ!?」という疑問で心がオーバーフローしておりました(笑)。オーバーヒートと言ってもいいか?
それに何かと脳の出来具合で比較される妹に対し「もしかしたら音楽なら勝負になるかも」と淡い期待を持ったからでもあります。子供の足で歩いて15分程度、アパート群の外れに在った幼稚園で彼女達はピアノを習っておりました。辿々しくポロポロと聴こえるピアノの音、僕は園庭で遊びながら気になって仕方がなかった。音楽を習ってみるということ。それは僕にとって甘美な夢と言ってもよかったのです。長く続いた重過ぎた小児喘息も奇跡的に快方に向っていたこの時期、少年の純粋過ぎるほどのパワー、その反動は実に大きなものだったに違いない。父も母も、僕が「ピアノを習いたい」と強く訴えたことには驚いたようでしたがすぐに応えてくれました。病弱で気が弱いというベッタリと貼り込まれたレッテルは容易に剥がれることはなかったし、年寄りになった今も身体のどこかに潜んでおります。

さて1年先行していた妹や友人達を2、3ヶ月程度で追い越して行ったわけですが、譜面を軽視するという先々これで苦労することになる大きな間違いをやってしまう。先生のお手本を耳で聴いて覚えてその場で弾いてしまうのです。その行為自体は決して悪くはないと思います。ソルフェージュの観点からすれば自然な形で音感が養われ音ひとつに対しての脳内の動向は周囲とは一線を隔てる個性の萌芽にも接続するものだろうと。しかし、その後の手当が必要だった。先行して感性で受止めたのは良いとして、それを垂れ流しにしたのが良くない。何故にその音と音の連鎖が魅力的に響くものなのか?それを譜面を前にしてゆっくり弾いてみることで、耳から入っていた音に自分の個としての考えが付加されるものだと考えております。まだ考えの足りていない小4の僕には、ピアノを弾くという行為と作曲が表裏一体であると言うことには気付かなかった。ピアノをさらうということは、バイエルでありソナチネであり、、という「ピアノのお稽古」という固定化されたイメージが定着してしまって、ピアノを与えられる以前に既に存在していた原音楽を一旦封印してしまっていたのは残念なところです。僕にとってのピアノは作曲のツール。そして自分の作品を演奏するための翻訳機みたいなものです。つまり作曲というものが目の前にある大きく聳える山であり、そこに共に向う相方がピアノということになるでしょうか。こういうスタンスでピアノをさらいたかった!と思います。であれば、もう少しはまともな音楽人生となったかも?、、と後悔です。今、僕のオンボロスタジオの器材ラックの上にショパンのプレリュード、これはヘンレ版になりますが置いてあります。冒頭の1番のところが開いたままです。時折ここから拾って弾くようにしておりますが、あまりに身近過ぎて自分の中では手垢が付いていたロマン派の巨匠ではあります。本当に今更で恥ずかしいのですが、その「音の使い方」には勉強になるところが山ほどあります。例えば、テンションの使い方、音のぶつけ方はクラシックの長き歴史の中でもピカイチの存在と言えるでしょう。そういったポイント確認し、読み解きながらゆっくりと弾いて行くと心が満たされます。たとえ小学生でも本作から技術的に容易な作品も散見されますから、アプローチしても良いと思います。上手く弾く必要などなくて、その世界観みたいなもの、イメージの強さが体感出来たら充分なのです。「子供は手が小さくて無理ではないか」とおっしゃる方もおられますが、それなら弾ける音だけを弾いて先生がフォローすればいい。そして、先を急がず音を選ぶことによってどういうハーモニーなのか理解出来るはずです。つまりあっさり初見で弾けるより、音楽の理解は弾けない方が有利かも知れない。但し諦めない、投げ出さないことが前提ではあります。やたらと上手いピアニストに限ってどうも面白くない、という場合が多いですが、英才教育により苦労せずに弾けるから音楽以外の思考がそこに入らない。思考を入れる前に弾けてしまうから。音楽はピアノだけではないのですが、音楽以外のことが大切と思います。音楽以外のことが在るから音楽で表現しようということになっているわけですから。
ショパンエチュードでは洒落にならないくらいに難しい。しかし、比較的平易な作品も転がっているショパン・プレリュードにはちびっ子達にも注目して欲しいものです。