あるピアニストの呟き - pianist TAKA -

ピアニスト・タカの音楽記録です。音楽以外の様々な話題も取り上げます。

「雨の工場地帯」という作品

これはFBのノートに書いた記事の加筆・修正となります。

 

7月8日ライブで再び演奏します。この作品、実は「冬」なのですね。これは以前、写真家・藤田さん(バン ドの写真が素晴らしいです!)の四季折々の写真と僕の作品4曲とを一緒にしてCDとした「四季」の”冬”のことになります。しかし、この冬は実はもっと 遡って僕が30歳台後半で作曲した「雨の工場地帯」からテーマを持って来たものでした。ネタバレというわけですが、一応ライブ前にここで少し振っておこう かな?ということでして、、、。「雨の工場地帯」は、そろそろ雨から雪に変わって行くであろう11月時分、ピアノの稽古をサボり、釜石市中妻町にあるプラ モデル屋さんに向う、当時の風景を追ったものです。ピアノの稽古は釜石市の中心部に近い大町というところで、スポーツ用品店の倉庫に使っている3階の小部屋でS先生が教えておりました。S先生を"お師匠さん"として認めていなかった僕はレッスンをさぼったものです。何故に認めなかったのか?それは先生がお手本を聴かせてくれなかった(弾けなかったのだと思います。)からです。僕は(今でもそうですが)ピアノの稽古は先生の演奏を聴くのが最も手早く演奏を掴みとれるものだと信じております。S先生は僕が高校3年の時にご病気で亡くなられました。流石にその時はもう少し真面目にやるべきだったか!と後悔したものです。

さて、、細雨というのか霧雨というのか、傘を開くかどうか微妙なところ、その中バス代をケチり、トボトボと歩いて行きます。その途中に大きな橋があり、その下を大渡川がユルユルと流れております。橋の真中辺に近づくにつれて製鉄所の姿が立体的に見えて来ます。工場の姿を間近で見られる場所は意外に少ないのです。大体は高い塀で遮断されているので、市民が中を伺うことは出来ない。しかし、この橋付近は例外で、その巨大で圧倒的な構造物を眺めることが出来る。乱立 する大小様々な煙突から吐き出される白色、オレンジ色の煙、毒々しく緑色に光る作業所上部「安全」というイルミネーション。その遠くに夕暮れ暗く影を落とす山々の稜線がそのコントラストを完全なものに仕上げているようでした。数年後、上京して映画館で観た「ブレードランナー」の映像に出会った時、何と郷愁に誘われるのだろうと思いましたが、今になって色彩、空気感の共通点に気付かされます。当時、僕はその場所を通る時、何故なのか「この瞬間という時間の不思議」を感じておりましたが、未来を信じて疑わなかった青臭い自分が恥ずかしく眩しく思い出されます。さて、この作品をピアノトリオでやるわけですが、譜面の代わりにワープロ打ちしたガイドを用意し、(メンバーさんには)後は音源の音を聴いて判断していただく考えからスタートしました。今、メンバーさんから意見があがってきており、なかなかに手厳しいです。僕の音に対する考えはまだまだ甘いのでしょう。イメージ表現とカッコを付けるのならもっと様々な実験を繰り返さないといけないみたいです。失敗を恐れず、あの日、あの時の空気感を伝えたい。

例えそれが曲がったイメージとして伝わったとしても、聴き手さんにとって、面白い音楽、美しい音楽として共有出来たらと願うものです。そもそも歌のない「演奏音楽」はその伝わるイメージが聴く側によって大きく変容するところが醍醐味なわけですから。

もっと弾かないと駄目ですね。今日は時間があります。

深く、深く掘り下げたいと思います。